前ページで、認知の原理と、美・優を後工程へ回す判断まで扱いました。
このページでは、それを実際のコピーとデザインへ落とし込み、そのうえでどこまで攻めるかを決めるところまで行きます。
前半が実装、後半が判断です。
順番を入れ替えないでください。作れるようになってから、使うかどうかを決めます。
認知を取るために、「意味」を捨てる
ここからは飛び道具の話が続きます。
前ページまでの原則を飛ばして、ここだけ持ち帰らないでください。事故ります。
まず、こういうタイトルのアニメがありました。
「チ。」
カタカナ一文字です。
正確には地動説を扱った作品なので、意味はちゃんとあります。ただ、パッと見た瞬間には、何のことか分かりません。
つまり、入口では意味を捨てている。
意味を捨てたタイトルというものが、それまでほとんどなかった。だから話題になりました。
同じことを、僕らの市場でやります。
ココナラのように、サムネイルが一覧で並ぶ場所を想像してください。
そこに並んでいるのは、ホームページ制作、LP制作、金額、実績、対応範囲。全部、中身をきちんと説明しています。
その中に、一枚だけこれを置きます。
「あ」
一般的なサムネ 【WEBデザイナー必見】 ホームページ制作 まずはご相談ください 実績200件/格安対応 VS 「あ」
目立ちます。というより、それしか目に入りません。
なんだこれ、となります。
実際に僕はこれを試してもらいましたが、相当クリックされました。
理由は二つです。
誰もやっていない。つまり新規性がある。
そして、情報を極限まで削ぎ落としているので、脳に「問い」が発生する。
僕はこれを情報密度のコントロールと定義しています。
人間には、不完全なものを補完したいという心理があります。埋めたくなる。確かめたくなる。
だから、足すのではなく、削る。
削り切ったところに、はてなマークが生まれます。
「あ」の後に、何を置くか
ただし、ここで終わったら最悪です。
クリックされた後に、答え合わせをします。
なぜ「あ」だけだったのか。なぜあなたはクリックしたのか。それは僕がマーケティングのロジックを持って、そう設計したからです。
そして、こう続けます。
そのロジックを持っているデザイナーが、他にいますか。
そのうえで、圧倒的なクオリティのデザインを見せる。
ここまでやって、初めて一発で決まります。
逆に言えば、中身のない人がこれをやると、ただの悪ふざけで終わります。
認知だけ取って、期待を裏切って、信頼を失う。最悪のパターンです。
飛び道具は、入口で作った期待を、中身で回収できる人だけが使えます。
二番煎じは使えない。だから市場をずらす
もうひとつ、飛び道具の性質として重要なことがあります。
最初にやった者だけが勝ちます。
「チ。」を見たあとに一文字タイトルのアニメを出しても、二番煎じです。
ただし、逃げ道があります。
市場をずらせば、その市場では一番目になれます。
アニメでやられたなら、曲でやる。
ココナラでやられたなら、Brainでやる。Tipsでやる。ランサーズでやる。クラウドワークスでやる。
紙のポスターでもいい。
市場が変われば、そこでは誰もやっていません。
飛び道具の寿命は短い。だから、どの市場でまだ空いているかを見る目のほうが、テクニックそのものより長く効きます。
あえて、中身をボカす
みんな、わかりやすさを意識するあまり、認知の段階で中身の解説をしてしまいます。
ブランディングの商品だから、名前にもブランディングと入れる。
Photoshopの講座だから、名前にもPhotoshopと入れる。
その瞬間、中身を勝手に予想されます。
あー、それ知ってる。一度学んだからいいや。
どれだけ完成度の高いプロダクトでも、名前だけでスルーされるリスクが生まれます。
だから、中身は匂わせにとどめて、認知に全振りする。
「誰でもシンデレラ・プロジェクト」が、まさにこれでした。
ここで感覚として掴んでおいてほしいのは、説明の総量は変わっていないということです。
言う内容は同じです。言う場所を、外から中へ移動させただけです。
キャッチコピーは、鋭く研ぎ澄ませ
ここまでの話を全部使って、一本のコピーを作ります。
例の女性社員育成スキームに戻ります。
定説型のコピーはこれでした。
「女性の力、信じてみませんか?」
成功の鍵は“女性を活かす組織づくり”。
個々の力を引き出す独自メソッドで、人財と組織の可能性を最大化します。
丁寧です。正しいです。そして、意外性がないのでスルーされます。
ここから研いでいきます。
まず、名指しから始めます。
「女性社員の力を引き出せていない経営者さまへ」
これが基本形です。誰に言っているのかが明確になりました。
次に、経営者の心情を突きます。
「女性社員が使えないと思ってませんか?」
言いにくいことを言っています。でも、思っている人はいます。
ここから、自分ごとの要素を残したまま、余計な言葉を削っていきます。
「御社の女性社員を覚醒させませんか」
「女性社員、覚醒」
そして最後に、聞き慣れない形へひねります。
「覚醒めよ、女性社員。」
説明する ↓ 対象を名指す ↓ 心情を突く ↓ 余計な言葉を削る ↓ 聞き慣れない形へ ↓ 「覚醒めよ、女性社員。」
これをファーストビューに、大きく置きます。
そして副題で、こう戻します。
御社の女性社員の潜在能力を、限界まで引き出す新時代の育成メソッド
強い言葉と聞き慣れないフレーズで認知を取り、副題で信頼側へ着地させています。
ここでひとつ、絶対に押さえてほしい視点があります。
「女性社員」という言葉で振り向くのは、経営者です。
なぜなら、女性社員本人は、日常生活で自分のことを「女性社員」だと自認していないからです。
名指しは、言葉の指す対象と、実際に振り向く人物が食い違うことがあります。
誰に届く言葉なのかを、必ず一段確認してください。
そして、コピーを研ぐときの原則。
足すのではなく、削る。
説明的なコピーは、逆説型であっても鈍くなります。削り切ったコピーだけが、ソリッドに残ります。
あえて、誤解されろ
ここは、この領域で最も過激で、最も誤解されやすいところです。
原典のまま置きます。
認知フェーズでは、こう言っていい。
「明日100万円儲かります」
そして、サイトに入った後、ボディのフェーズでこう言います。
「ただし、元手に100万円が必要です」
これは詐欺ではありません。伝える順番の話です。
ただし、条件があります。
最終的に、事実として回収できる前提がある場合に限ります。
回収できないなら、これはただの嘘です。使ってはいけません。
なぜ順番を変えるだけで結果が変わるのか。数字で説明します。
認知 「明日100万円儲かります」 ↓ クリック ↓ 本文 「ただし元手に100万円が必要」 ↓ 条件を理解 ↓ 納得した人だけ残る ┌────────────────────────┐ │ 事実として回収できなければ、使えない。 │ └────────────────────────┘
誠実さを優先して、入口の時点で「元手100万円があれば倍になります」と書いたとします。
すると、100万円を持っていない人は、タイトルを見ただけで離脱します。
サイトに入ることすらありません。検討する前に消えます。
ところが、入口を「明日100万円儲かります」にしておくと、何が起きるか。
中に入ってから条件を知った人の中に、「倍になるなら、100万をなんとか調達しよう」と考える属性の人が残ります。
この属性の人は、入口で弾いてしまうと二度と戻ってきません。
条件を先に出すか、後に出すか。それだけで、残る人の質が変わります。
みんな、ここでビビります。
誤解されたら怖い。クレームが来たら怖い。炎上したら怖い。
だから、認知の段階で全部の条件を書いてしまう。
その恐怖が、売上を殺しています。
殴って、目を覚まさせる。
条件を伝えるのは、目を覚ました後です。
DOMINIONとしての注記
ただし、実務ではここに線を引く必要があります。
この例は原典の極端例として、そのまま置いています。
一方で、扱う業種によっては、この手法をそのまま使えません。
医療。美容。健康食品。金融。投資。人材。
こうした領域には、表現そのものを規制する法律があります。強い認知が取れるかどうか以前に、その表現を使ってよいかどうかの判断が先に来ます。
この線引きは第7領域で正面から扱います。
ここでは、順序だけ覚えてください。
使えるかどうかを確認してから、どこまで攻めるかを決める。
逆はありません。
名指しを、デザインへ落とす
ここからは実装の話です。
名指しには、三つの階層があります。
肩書き名指し
「駆け出しWEBデザイナーへ」
「整体院の院長へ」
状況名指し
「ココナラで消耗してる人へ」
「単価3万で詰んでる人へ」
感情名指し
「“私には無理かも”で止まってる人へ」
「怖くて値上げできない人へ」
肩書き 「誰なのか」 ↓ 状況 「今どこにいるのか」 ↓ 感情 「本人しか知らない内側」
下へ行くほど、対象は狭くなります。そして、深く刺さります。
肩書きは、その人が名乗っているだけです。
感情は、本人しか知らないはずのものです。それを言い当てられると、人は止まります。
デザイン実装の指定はこうです。
┌────────────────────────────┐ │ 単価3万で詰んでるWEBデザイナーへ │ ← 最上部 │ │ │ メインキャッチ │ │ │ │ キービジュアル │ └────────────────────────────┘
名指し文は、ファーストビューの一番上か、一番左に置きます。視線の起点です。
名指し文だけ、文字サイズか太さで格上げします。
名指し文の周辺だけ、余白を厚く取ります。
余白は「ここを読め」という指示です。
背景色とのコントラストも確保して、埋もれさせないでください。
デザインで命令する、という感覚を持ってください。
理想の未来を、ビジュアルで見せる
コピーで名指したら、次はビジュアルで未来を見せます。
未来には三種類あります。
情景未来。その場面が見える。
カフェでPCを開いている。予約通知が鳴っている。売上のスクリーンショット。LINE登録が増えていく画面。
数値未来。数字で見える。
月商。成約率。単価。案件数。工数。
感情未来。そのときの気持ちが見える。
安心。解放。誇り。余裕。勝ち筋が見えている感覚。
情景未来 「その場面が見える」 数値未来 「数字で見える」 感情未来 「そのときの気持ちが見える」
実装のコツも置いておきます。
情景未来は、写真か一枚絵で場面を固定します。人の顔が入ると強くなります。
数値未来は、数字をとにかく大きく置きます。グラフでも成立しますが、数字のほうが速い。脳に直接入ります。
感情未来は、表情、姿勢、余白、抽象イメージで作ります。余白そのものが安心を生みます。
商材によっては、風景や光で希望を演出することもできます。ただ原則としては、人を入れたほうが強い。
そして、ここでひとつ噛み合わせを確認してください。
コピーが約束している未来と、ビジュアルが見せている未来は、同じものになっていますか。
コピーで「予約に追われない働き方」と言っているのに、写真の人物が忙しそうに動いていたら、二つの約束が食い違います。
言葉と絵は、同じ未来を指す。ここがズレていると、どれだけ強い名指しを置いても、その下で信頼が崩れます。
コピーが主役、デザインは脇役
最後に、この領域全体を貫く原則を置きます。
コピー 「何を言うか」 ↓ 主役 デザイン 「どこを見せるか」 「どう止めるか」 「どう感じさせるか」 ↓ 増幅装置
デザインを主役にしてはいけません。
コピーを一切使わず、絵と写真だけで見せる。新規性としては成立しますし、実際に目は引きます。
ただ、そこで止まりやすい。
何を言っているのかが分からなければ、認知は取れても、買う理由までつながらないからです。
デザインは、コピーの威力を何倍にもする装置です。装置だけでは、その先の購入理由まで自動ではつながりません。
ここまでが、攻めの認知の実装です。
ここからは、これを案件で使うための話に移ります。
攻められる。しかし、この案件では攻めない
ここまでで、攻めの認知の作り方は全部渡しました。
ここから扱うのは、それをいつ使い、いつ使わないかです。
この領域は、攻めれば攻めるほど良い、という章ではありません。
最大まで振り切ることが正解でもありません。
攻められる。しかし、この案件では攻めない。
この判断ができて初めて、ここまでの内容は武器になります。できないうちは、ただの危険物です。
集客できない人は、全員「守りの認知」から出られていない
先に、逆側から見ておきます。
成果が出ていない人の共通点は、驚くほどはっきりしています。
丁寧。
誠実。
真面目。
優等生的なコピー。
人としては全部いいことです。ただ、認知フェーズでは、これが全部そのまま弱点になります。
具体的には、こうなります。
美容ならきれい目のデザイン。
ビジネスやコーポレートならネイビー。
病院なら緑やピンクで安心感。
そして、ターゲット全員にちゃんと説明する。
セオリー自体は正しいんです。セオリーは大事です。
ただ、セオリーしかないものは、埋もれます。
なぜセオリーから出られないのか。理由は一つです。
初手から、誤解とクレームを恐れているからです。
炎上したら怖い。誤解されたら怖い。だから安全に作る。安全に説明する。
その結果、素通りされる。
成果も結果も出ない。
ここから出るために、いったんコンフォートゾーンを離れてもらいます。
「毒」と「トゲ」は、別物です
DOMINIONでは、ここまで扱ってきた強さを二種類に分けて管理します。
混ぜたまま扱うと、クライアントに説明できません。
トゲとは、目を止めさせる異物です。
白いカレー。
「あ」。
「覚醒めよ、女性社員。」
YouTubeの巨大文字。
ミャクミャク。
「私は誰よりも高いです」。
意味の分からなさ、逆説、過剰なサイズ、場とのミスマッチ。手段は違いますが、役割は同じです。脳に「ん?」を発生させること。
毒とは、選んだ立場を、中和せずに出すことです。
「女性社員が使えないと思ってませんか?」
「その場だけの軽さを、もう繰り返さないために。」
「私は誰よりも高いです」
誰の味方なのか。何を良しとしないのか。何を捨てるのか。
それを、当たり障りのない言葉で薄めずに出す。
トゲ = 目を止める 「あ」 白いカレー 巨大文字 異形 毒 = 立場を見せる 誰の味方か 何を良しとしないか 何を捨てるか
毒を作るときに、必ず外すもの
毒を入れようとすると、多くの人が敵を大きく取りすぎます。
AIが悪い。時代が悪い。市場が悪い。景気が悪い。世間が悪い。みんながそうしている。
これは全部、敵ではありません。主語が大きすぎて、誰も痛くないからです。
第3領域で「仮想敵は人ではなく概念」だと学びました。ここではもう一段進めます。
敵は、人間の思考、姿勢、行動、そして業界構造に置き直してください。
たとえば、こうです。
同業者に褒められることを目的にして、本当に見るべき相手を見なくなった人。
得意な努力に逃げて、売上に直結する弱点から目を逸らしている人。
安全な言葉で発信して、誰にも嫌われない代わりに、誰の記憶にも残っていない人。
ここまで絞ると、当てはまる人は痛いはずです。痛いから、止まります。
怒りの裏に、守りたいものを置く
そして、毒が単なる悪口に見えるときは、必ずここが抜けています。
その怒りは、何を守るための怒りなのか。
届くべき人に届いていない言葉を守りたいのか。作り手の仕事の価値を守りたいのか。狙った読者が、浅い世界に閉じ込められたままになることが我慢ならないのか。
守りたいものが本文に出ていれば、毒は主張になります。出ていなければ、ただの攻撃です。
怒りを整えるというのは、怒りを弱めることではありません。照準を合わせることです。
ここを混同すると、クライアントに指摘された瞬間、毒を全部抜いてしまいます。
強い言葉は、削るのではなく、定義する
もうひとつ、実務で効くやり方を渡します。
強い言葉が出てきたとき、たいていの人は上品な言葉へ置き換えます。
そうではありません。
強い言葉には、定義と文脈を与えてください。
たとえば「貧乏人の思考」という言葉を使うなら、そのまま置かずに、こう続けます。
財布の中身の話ではない。自分の時間をタダだと思っている思考のことだ。年商がいくらあっても、半日かけてサイトのエラーを自分で調べて、外注費が浮いたと喜んでいるなら、その頭の中は貧しい。
言葉は削っていません。むしろ刺さる範囲を正確にしただけです。
削ると威力が消えます。定義すると、誤爆だけが消えます。
トゲと毒は、両方入れなくていい
トゲだけの案件もあります。毒だけの案件もあります。
トゲは認知を取ります。毒は共感と反感を同時に取ります。
目的が違うので、案件ごとに選んでください。
強度ダイヤル──守り/刺す/攻め
ここからが、DOMINIONとしての実務OSです。
同じ案件を、三段階の強度で書き分けます。
第4領域から使っている整体院の案件で見ていきます。慢性的な腰痛を主訴とする層を狙う整体院です。
守り(強度1)
地域で10年。丁寧なカウンセリングと、おひとりに合わせた施術を。
破綻はありません。誰も傷つけません。誰の記憶にも残りません。
刺す(強度2)
その場だけ軽くなる整体を、まだ続けますか。
対象になる人の状況が絞られています。この一文は、通っているのに戻ってしまう人にしか向いていません。
そして、業界のスタンダードである「気持ちよさ」を、静かに否定しています。
攻め(強度3)
揉んでも、戻ります。
整体院が言う言葉ではありません。同業からは嫌われます。
そして、慢性腰痛で何年も揉み続けてきた人は、足を止めます。
守り ───────── 刺す ───────── 攻め 1 2 3 固有性 明確なトゲ 反発まで許容 対象が広い 状況が絞られる 強い立場 説明的 定説を壊す 市場の逆 安心 違和感 大きな違和感
重要なのは、ここです。
最大まで回すことが、正解ではありません。
ダイヤルは、案件ごとに置く場所を決めるためのものです。
強度3を出すなら、次の三つを全部確認してください。
その市場が、全員同じことを言っていて埋もれている。
クライアントに、入口の強さを回収できる中身がある。
クライアント自身が、嫌われることを引き受ける覚悟がある。
ひとつでも欠けているなら、強度2で止めます。
市場が埋もれていないなら、そこまで振る必要がありません。回収できる中身がないなら、期待だけ膨らませて終わります。覚悟がないなら、公開後の反応で必ず揉めます。
攻めてはいけないものを、先に決める
強度を上げるときに、絶対に混ぜてはいけないものがあります。
まず、事実から逸脱するコピーは禁止です。
逆説も、ギャップも、極端な入口も、すべて事実の中から取り出すものです。
存在しない実績を作る。出せない結果を約束する。これは攻めではなく、嘘です。
次に、攻撃する対象を間違えないでください。
攻撃していいのは、思考、姿勢、逃げ、甘え、誤認、行動、そして業界構造です。
性別、年齢、国籍、身体的特徴、病気、宗教、出自。こうした属性を撃った時点で、それは認知設計ではなくなります。強度の問題ではありません。やってはいけないことです。
そして、単なる煽りと、認知のための強さを分けてください。
不安を作って売る。恐怖で追い込む。他社を貶める。
これらは短期的には数字が動くこともありますが、クライアントのブランドを削ります。
僕らが売っているのは、目先の反応ではありません。
そして、表現が使えるかどうかの確認が先です。
医療。美容。健康食品。金融。人材。
これらの領域には、表現そのものを縛る法律があります。
先ほどの整体院の例で言えば、「治る」「治療」「効果」といった言葉は、そもそも使える言葉かどうかの判断が先に来ます。
強い認知が取れるかどうかを考えるのは、その後です。
この線引きの詳細は、第7領域で扱います。
最後に、クライアントが許容できる強度があります。
これは法律でも理屈でもなく、その経営者の性格と、事業のフェーズと、その地域での立ち位置で決まります。
ここを無視して尖った案だけ持っていくと、提案そのものが通りません。
クライアントには、比較で提案する
では、この尖った案をどうやって通すのか。
まず、原典どおりの形を置きます。
パターンA:安全牌
パターンB:攻めた認知コピー
この二軸を提示して、選んでもらう。
普通のデザイナーは、Aしか出しません。無難で安全なコピーだけを持っていきます。
僕らは、その上にBを乗せる。そして、なぜBが成立するのか、その論理と根拠を整然と説明します。
DOMINIONでは、これを運用しやすいように三段階へ拡張します。
守り。刺す。攻め。
原典は二軸。DOMINIONの実務OSは三段階。ここは分けて覚えてください。
普通のデザイナー 安全案 ↓ 提出 DOMINION 安全案 ─┐ 刺す案 ─┼→ 比較 → 根拠を説明 → クライアントが選ぶ 攻め案 ─┘ ↓ 「この人は、自分にない視点を持っている」
ここで、最も重要なことを言います。
奇抜な案が採用されることが目的ではありません。
本当の目的は、相手の思考の外にある選択肢を見せることです。
提案の幅が広ければ広いほど、たとえ採用されなくても、「この人は自分が持っていない視点で語れる人だ」と見てもらえます。
そこでクライアント自身にパラダイムシフトが起これば、あなたは信頼だけでなく、尊敬の対象になります。
三案を並べて、根拠を説明して、選んでもらう。
選ぶのはクライアントです。決定権を握ろうとしないでください。
判断できる状態を作るのが、案件統治者の仕事です。
これは第1領域から一貫して言ってきたことで、ここでも同じです。
暴力のあとに、慈愛で包む
入口を強くしただけで終わると、何が起きるか。
期待だけが膨らんで、中身が追いつかず、信頼を失います。
だから、この構造を最後に置きます。
暴力で叩き起こし、そのあと、慈愛で包む。
慈愛というのは、精神論ではありません。圧倒的な価値提供のことです。
期待を超える中身。誠実な説明。約束の回収。
そして、この落差こそがLTV(顧客生涯価値)を最大化します。
第一印象が低いところから入って、実際には想像以上だった。
この落差を経験した客は、再購入や紹介につながりやすくなります。
人口が減っていく市場で、新規だけを追い続けるのは苦しい戦い方です。
一度買ってくれた人に、二度目、三度目を買ってもらう。
そのための落差を、設計として作る。
入口の強さは、そのための装置です。
裏を返せば、中身のない人が使うと、ただの詐欺になります。
十分に注意してください。
これは、弱者の武器です
もうひとつ、適用範囲の話をしておきます。
大手企業ほど、攻めるコストが高くつきます。
守るべきブランド資産があり、既存顧客がいて、社内の合意形成があり、株主への説明がある。尖った案を一本通すために、動かさなければならない人の数が違います。
ミャクミャクのように、あの規模でも通る例はあります。ただ、通すまでの労力は桁が違うはずです。
一方、個人事業主や中小企業は、意思決定が軽い。経営者が「やる」と言えば、明日から尖ったポジションを取れます。
つまり、これは弱者の武器です。
僕らのクライアントである個人事業主や中小企業は、このアングラな手法を武器にできます。
守るものが少ないことは、この一点においては強みです。
そして、それを提案できるデザイナーが、ほとんどいません。
だからこそ、ここは空いています。
COLUMN:デザイン村から出る
最後に、あなた自身の話をします。
多くのデザイナーが成果を出せない理由は、結局これだと思っています。
デザイン村の中で戦っているからです。
デザイナー同士で、きれいだね、整ってるね、センスいいね、と褒め合って安心している。
みんなと一緒は、安心します。同じように頑張って、同じようなものを作って、不安を紛らわせる。
だから稼げないし、停滞するし、何年も同じ場所でまごまごすることになる。
金を払うのは、デザイナーではありません。経営者です。
だから僕は昔からずっと言っています。
コミュニティに入るなら、デザインコミュニティではなく、経営者コミュニティに入ってください。
デザインコミュニティ D D D D D D D 自分 D D → 同質 → ライバル多数 経営者コミュニティ 経 経 経 経 経 経 経 D 経 経 → 自分だけが異物 → デザインの競合が不在
周りが全員経営者で、デザイナーは自分ひとり。
共通言語もない。話題も「学ぶこと」でしか作れない。
その瞬間、ライバルが不在になります。
自分自身が異物になる市場へ、自分から入っていく。
これが、市場の相対性を自分の身に適用するということです。
副作用も正直に書いておきます。
僕には、デザイナーの発信者仲間としての交友関係がほとんどありません。
やっていることが常に「誰もやっていないこと」なので、理解もされません。洒落にならないくらい孤独です。
でも、それでいい。
僕自身が、デザイナー界隈で「嫌われる認知学」を実践しているモデルケースだということです。
異物になるとは、そういうことです。
ワーク
いきなり自分の案件で考えないでください。まず、講義で使った素材で練習します。
練習1
「女性が活きれば、会社が変わる」は定説型か逆説型か。
そのうえで、「クビ目前の女性社員が、3ヶ月で営業部のエースに」と並べて、脳の反応がどこで変わったのかを言語化してください。
練習2
「ブランディング講座」から「誰でもシンデレラ・プロジェクト」への変更で、何を残し、何をぼかしたのかを書き出してください。
練習3
YouTubeのサムネイルで、上品な余白のものと、顔ドアップ・巨大文字・うるさい配色のものを並べます。
なぜ媒体によって正解が変わるのかを、あなたの言葉で説明してください。
練習4
「一番高いHP」の事例を、入口のトゲとその後の回収に分離してください。
練習5(ここから自分の案件)
現在進行中の案件、または直近で終わった案件をひとつ選び、ファーストビューのキャッチコピーを三段階で書いてください。
守り。刺す。攻め。
そのうえで、次の三つに答えてください。
このクライアントには、どの強度を提案するか。
なぜ、その上の強度を選ばなかったのか。
攻め案を採用する場合、入口の強さを何で回収するのか。
「攻めない」を選ぶことも、正解です。
ただし、選ばなかった理由を説明できないなら、それはただ怖かっただけです。
そして、練習5は必ず手で書いてください。
守り・刺す・攻めを自分で三段階書けるようになるまでは、この領域は身についていません。三案を並べられて初めて、クライアントの前で選択肢を出せます。
第5領域テストについて
第5領域のテストは、用語の定義を問うものにはしません。
講義で実際に見た素材を、そのまま問題にします。
女性社員のコピーが、なぜあの形に着地したのか。
「誰でもシンデレラ」への三つの反論に、どう答えたのか。
「明日100万円儲かります」が許される条件は何だったのか。
「作れるのに作らない」と「作れないからダサい」は、どこが違うのか。
動画を本当に理解していなければ解けない設計にします。
合格者には、この領域の砥石を解放します。
- 毒とトゲ設計チェックリスト
- 嫌われる認知設計テンプレート
- 守り/刺す/攻め 強度設計シート
- 訴求の尖らせ方チェックリスト
この四つは、案件のたびに手で当てるためのものです。
定説型に落ちていないか。敵が抽象語へ逃げていないか。名指しが肩書きで止まっていないか。強い言葉に定義がついているか。入口の強さを、何で回収するのか。
案件で毎回この講義を読み直す必要はありません。四枚を当てて、引っかかったところだけ本文へ戻ってきてください。
第5領域の理解度テスト
テストを受けるにはログインしてください。
解放武器・ぶっ刺しコピー設計ベルテくん
この武器を見るにはログインしてください。
第6領域へ
ここまでで、認知の設計は終わりです。
誰に向けるかを決めた。
どこまで強く出るかを決めた。
コピーを研いだ。
デザインでの見せ方も決めた。
次に来るのは、それを実際のビジュアルとして立ち上げる工程です。
AIで速度と物量を確保しながら、どこまでをAIに任せ、どこから人間が責任を持つのか。
ラフを出す。プロトタイプを作る。人間が再設計する。
第5領域で決めた「歪ませ方」を、実際の画面に載せていきます。
ただし、ここでもう一度言います。
任せれば、無難な側へ戻ります。
どこまで崩すのか。どこは崩さないのか。それを決めて渡すのは、あなたです。
だから第6領域は、AIに任せる話ではありません。
AIに、あなたの設計を実行させる話です。
第6領域へ進んでください。


